母であり、妻であり、娘でもあり、そして企業人でもあったり…。シチュエー
ションによってさまざまな「顔」を使い分けている私は、どこかいつもせわしな
く、心に余裕のない毎日を過ごしている。ともすると、忙しさを理由に自分自身
を振り返ることもなく、とにかく走り続けてしまう。そして首が回らないほどに
行き詰ってしまって始めて、私の「心の器」の中は、気持ちの疲れや心の垢など
ドロドロした何かで満たされていることに気がつくのだ。これが身体的な疲れな
ら、温泉へ行ったり、患部をマッサージしてもらうことで、癒されることもある
だろう。心がどうにもならないほどに疲れた時、みなさんはどんな対処をしてい
るのだろうか?
私自身は、「プレイバックシアター」にとても助けられていると思う。プレイ
バックシアターの場で、テラー(語り手)として、私を追い詰めている何かについ
てありのままを語る。役者たちが即興で演じてくれる「私が主人公の再現ドラマ
」を第三者的な視点で観て、感じるのだ。そうすることで、私自身を取り巻いて
いる漠然とした状況が、まず整理されていく。複雑に絡み合っている要因をひと
つひとつ紐解きつつ、掘り下げていく。そして、核心まで到達したとき、心の琴
線にふれるのだ。それは、永らく濃い霧で覆われていた心の模様がスッーと晴れ
ていく瞬間でもある。時には涙が自然と頬をつたわり、流れ落ちることもある。
そのピュアな涙はモヤモヤしたものすべてを洗い流してくれる。こうして、次へ
のステップに目を向け、スタートラインに立つことができるのだ。私は何度もこ
んな体験をしてきた。
「人生いろいろ」とは、よく言ったもので、生きていれば良いも悪いもいろいろ
なことが起こるもの…。10年間の「プレイバックシアター」の活動を通じて、自
分自身に襲い掛かるさまざまな風雪に、竹のようにしなりながらも、芯は一本通
って折れないという「しなやかな強さ」をもらったような気がする。そして、暴
風雨にも負けないエネルギーをもたらせてくれた。
だからこそ、仲間とともに「プレイバックシアター」を大切に伝えていきたい…
☆
長谷川 里美(さっと)
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うぞ。